AGENT 2026.10.12

AIをマーケティングに使う前に、決めておく4つのこと — 道具より先に「誰に・何を・どの順で」

AIをマーケティングに入れて成果が出ない会社の多くは、道具ではなく、その手前で止まっています。誰に売るか、何を約束するか、どの順で伝えるか、どこをAIに渡すか。この4つを決める順番と、決まっていないと何が起きるかを書きます。

AIをマーケティングに使う前に、決めておく4つのこと — 道具より先に「誰に・何を・どの順で」 — AIマーケティング株式会社

「AIでマーケティングを効率化したい」というご相談を受けると、最初に出てくる質問はたいてい道具の話です。ChatGPTとClaudeのどちらがいいか。どの自動化ツールを使えばいいか。プロンプト(AIへの指示文)はどう書けばいいか。

どれも大事な質問です。ただ、私たちがダイレクトレスポンスマーケティング — 広告や文章を出して、その場で申し込みや購入という反応をもらう売り方のことです — を10年やってきて、いま自社のマーケティングをAIで回している立場から言うと、最初に決めるべきことは道具の外にあります。

結論を先に書きます。

AIは「売れる型」を速く回す装置であって、型そのものは作ってくれない。 先に決めるのは、誰に売るか → 何を約束するか → どの順で伝えるか → どこをAIに渡すかの4つ。この順番で決める。 ここが決まっていないままAIを入れると、的外れなものが、速く、大量に出てくるだけになる。

順に説明します。

「良い記事を書いて」で良い記事が出ない理由

AIに「良いブログ記事を書いて」「売れる広告文を考えて」と頼むと、それらしいものが出てきます。文法は正しく、構成も整っています。そして、たいてい何も起きません。

これをプロンプトの書き方の問題だと考える方が多いのですが、私たちの見立ては違います。「良い」の中身を、頼む側が決めていないのが原因です。

「良い記事」とは誰にとって良いのか。読んだ人に何をしてほしいのか。その人はいま何に困っていて、何を知らないのか。ここが空白のまま頼むと、AIは空白を「いちばんありがちな答え」で埋めます。ありがちな答えは、誰にも刺さりません。

人に仕事を頼むときも同じです。新しく入った担当者に「良い記事を書いて」とだけ言う会社はありません。誰向けか、何を伝えたいか、読んだあと何をしてほしいかを伝えるはずです。AIに対しては、なぜかそこが省かれがちです。

つまり、AIの出来を決めているのはAIの知識ではなく、頼む側が持っているマーケティングの判断です。

決める順番は4つ

私たちが自社でも、ご相談先でも、この順で決めています。

順番決めること決まっていないと起きること
1誰に売るか全員向けの、誰にも刺さらない文章が量産される
2何を約束するか機能の説明ばかりで、買う理由が書かれない
3どの順で伝えるか情報は揃っているのに、申し込みまで進まない
4どこをAIに渡すか任せてはいけない判断までAIが勝手に埋める

順番に意味があります。上が決まらないと、下は決められません。

1. 誰に売るか

いちばん最初で、いちばん省かれやすいところです。

「中小企業の経営者」「30代の女性」のような書き方は、決めたことになりません。範囲が広すぎて、何を書けばいいかが絞れないからです。決めたことになるのは、その人がいま何に困っていて、何を試して、なぜうまくいかなかったのかまで言えるときです。

たとえば「AIを入れたいが、社内に詳しい人がいない会社」と「AIツールを入れたが、使われなくなった会社」では、同じ「AIを使いたい会社」でも、刺さる言葉がまったく違います。前者には始め方を、後者には止まった理由を書く必要があります。

ここで決めた内容は、AIに渡す一番大事な材料になります。逆に言えば、ここが書けないうちは、AIに何を頼んでも精度は上がりません。

2. 何を約束するか

次に、その人に何を約束するかを決めます。約束とは、「これを買う(読む・申し込む)と、あなたは何を手に入れられるか」のことです。

ここでよく起きるのが、商品の機能や特徴を並べて終わるパターンです。「AIで記事を自動生成」「休まず動く」は機能であって、約束ではありません。買う側が知りたいのは「それで自分の何が変わるのか」です。

もうひとつ大事なのは、守れない約束をしないことです。AIは、頼めばいくらでも強い約束を書いてくれます。根拠のない数字や、言い切りすぎた表現も平気で混ぜます。何を約束してよいかは、自社の実績と、法律や広告の決まりを知っている人間にしか判断できません。ここは最後まで人が決める場所です(企画書で同じことが起きる話は企画書をAIに書かせるとき、任せてはいけない3つに書きました)。

3. どの順で伝えるか

誰に、何を約束するかが決まったら、どの順で伝えるかを決めます。

人は、知らない会社の商品をいきなり買いません。困っていることに気づく → 解決の方法があると知る → その方法の中でなぜこの会社なのかが分かる → 申し込む。この流れのどこで止まっているかで、打つ手は変わります。

相手がいる段階必要なもの
困りごとにまだ気づいていない気づかせる情報(問題の正体を言葉にする記事など)
解決の方法を探している選び方・比べ方の判断基準
候補を絞っている実際のやり方、実績、向き・不向き
申し込むか迷っている条件(価格、範囲、返金や解約の扱い)をはっきり書いたもの

AIは、この表のどの段の文章も書けます。ただ、どの段が足りていないかは、自社の数字と顧客の声を見ている人にしか分かりません。足りているところにAIで量を足しても、成果は変わりません。

私たちのサイトでいえば、「選び方」の記事と「実際のやり方」の記事を分けて置き、最後に無料レポートへの導線を置いています。どの記事も、読者がいまどの段にいるかを先に決めてから書いています。

4. どこをAIに渡すか

ここまで決めて、はじめて道具の話になります。

渡す範囲を決める基準は、私たちの場合ひとつです。間違えたときに、取り返しがつくかどうか。

AIに渡しやすい人が持つ
決めた型に沿った下書き誰に売るか、何を約束するかの判断
案をたくさん出すこと出た案から選ぶこと
データの集計と要約数字の意味づけと次の打ち手
表記ゆれや言い回しの直し価格・条件・固有名詞・数字の最終確認
決まった手順の繰り返し外に出す直前の承認

左側は、間違えても直せば済みます。右側は、間違えたまま外に出ると、お客さまの信頼や、場合によっては法律の問題に関わります。

この線の引き方は、AIマーケティング代行は、何を代行して何を代行しないのかでも詳しく書いています。

決まっていない状態でAIを入れると、何が起きるか

順番を飛ばしてAIから入った場合に起きやすいことを、構造として整理しておきます。

  • 量だけが増える。 記事や広告文の本数は増えるが、どれも同じような内容で、問い合わせにはつながらない
  • 社内の評価が「AIは使えない」になる。 本当の原因は型が無いことなのに、道具のせいにされて、取り組みそのものが止まる
  • 確認の手間が増える。 何が正しいかの基準が無いので、出てきたものを毎回一から読み、毎回違う理由で直すことになる
  • 道具の乗り換えを繰り返す。 出来が悪いのを道具のせいだと考え、別のAIに替える。前提が同じなので、結果も同じになる

どれも、AIの性能が上がっても解決しません。新しいモデルが出るたびに試してみる価値はありますが、型が無いまま入れ替えても、的外れなものが少し上手な文章で出てくるだけです。

「型」を書き出すと、AIへの指示がそのまま出来上がる

ここまでの4つを決めると、思わぬ効果があります。決めた内容を書き出したものが、そのままAIへの指示になることです。

私たちは、記事やメールを書かせるとき、毎回プロンプトを工夫しているわけではありません。「誰に向けて」「何を約束し」「どの段の読者に」「何を書いて何を書かないか」を書いた紙を渡しています。中身はマーケティングの判断であって、AIの専門知識はほとんど入っていません。

この紙があると、次のことができるようになります。

  • AIを替えても、出来が大きく変わらない(材料が同じだから)
  • 担当者が替わっても、同じ基準で確認できる
  • 出てきたものを直すとき、「なぜ直すのか」を言葉で説明できる

逆に、この紙が書けないときは、AIの使い方ではなく、自社の売り方が言葉になっていないことが問題です。そこを言葉にする作業は、AIの導入より前の仕事です。

私たちが正直に書いておくこと

この記事で「4つを決めればうまくいく」と言うつもりはありません。決めた型が間違っていることもあります。誰に売るかの見立てが外れていれば、どれだけ丁寧にAIで回しても成果は出ません。

ただ、型が決まっていれば、どこが外れたのかを確かめられます。 反応が無かったとき、対象が違ったのか、約束が弱かったのか、伝える順番が悪かったのかを、一つずつ切り分けられます。型が無いと、外れたことは分かっても、どこが外れたかが分かりません。

AIを入れて速くなるのは、この「試して、外れて、直す」の一周です。一周を速く回せることには大きな価値があります。ただし、回す対象の型は、人が持っている必要があります。

まとめ

  • AIは「売れる型」を速く回す装置であって、型そのものは作ってくれない
  • 「良い記事を書いて」で良いものが出ないのは、プロンプトの問題ではなく、「良い」の中身を頼む側が決めていないから
  • 決める順番は、誰に売るか → 何を約束するか → どの順で伝えるか → どこをAIに渡すか
  • AIに渡す範囲は「間違えたときに取り返しがつくか」で決める。約束・条件・数字・外に出す直前の承認は人が持つ
  • 決めた内容を書き出すと、それがそのままAIへの指示になる。書き出せないなら、先に整えるべきは自社の売り方のほう
  • 必要なのは、AIの知識よりもマーケティングの知識

あわせて読んでいただきたい記事です。

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本記事の内容は2026年10月時点のものです。

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