セールスレターをAIに書かせる — 骨格は任せられますが、オファーは任せられません
セールスレターをClaudeに書かせるとき、何を渡し、人がどこを直すのか。約束・証拠・オファー・締めという骨格のうち、任せてよいのはどこまでか。ダイレクトレスポンスの実務から、指示の型と人が直す3箇所をそのまま書きます。
商品を売るための長い文章を、AIに書かせてみたことがある方は多いと思います。出てくるものは、だいたい読めます。構成も整っています。そして、そのまま出すと売れません。
私たちはダイレクトレスポンスマーケティング — 広告や文章を出して、その場で申し込みや購入という反応をもらう売り方のことです — を10年やってきました。その経験から言うと、AIが書いたセールスレターが売れない理由は、文章が下手だからではありません。書く前に渡すものが足りていないからです。
この記事では、私たちがClaudeにセールスレターを書かせるときに何を渡しているか、出てきた原稿のどこだけを人が直しているかを、そのまま書きます。
結論から書きます。
骨格を組む作業はAIに任せられる。オファー(買う条件)だけは、人が決めて人が書く。
順に説明します。
セールスレターとは何か
先に言葉を揃えておきます。
セールスレターとは、商品やサービスを売るために書く長い文章のことです。Webページ1枚のこともあれば、メールの本文のこともあります。会社案内のように「こういう商品です」と紹介するのではなく、読んだ人にその場で申し込んでもらうことを目的に書きます。
もうひとつ、この記事でくり返し出てくる言葉があります。
オファーとは、「何を、いくらで、どういう条件で渡すか」の全体のことです。価格だけの話ではありません。いつまでに申し込む必要があるのか、返金はあるのか、何がついてくるのか、誰が対象なのか。買う側が「申し込むかどうか」を判断するために必要な条件が、ぜんぶオファーです。
セールスレターの良し悪しは、文章よりオファーで決まります。ここが後で効いてきます。
セールスレターの骨格は4つのブロックでできている
長い文章に見えても、中身は4つのかたまりに分かれます。
| ブロック | 何をする場所か | AIに任せられるか |
|---|---|---|
| 約束 | 読んだ人が何を手に入れられるのかを、最初に示す | 案出しは任せられる。選ぶのは人 |
| 証拠 | その約束が本当だと思える材料を並べる | 任せられない(後述) |
| オファー | 何を、いくらで、どういう条件で渡すかを示す | 任せられない |
| 締め | 申し込む方法と、いま申し込む理由を示す | 骨格は任せられる |
AIが得意なのは、この4つを順番どおりに、読みやすく並べることです。日本語として破綻せず、話が飛ばず、最後まで読める形にする。ここは正直、人が手で書くより速いです。
苦手なのは、証拠とオファーです。理由は同じで、どちらもこちら側の事実に属するものだからです。手元にある事実の外側は、AIには分かりません。分からないまま書かせると、もっともらしく埋めてきます。
AIに渡すもの — 3つだけ
私たちが書かせる前に用意するのは3つです。これを用意しないまま指示を出すと、何度書き直させても同じところで詰まります。
1. 商品の事実
何が含まれていて、何が含まれていないか。どういう形で渡すのか。誰が担当するのか。
ここに書かなかったことは書かれない、という状態を先に作ります。逆に言うと、ここに貼らなかった良い点は、原稿に一切出てきません。もったいないと思うかもしれませんが、これが正しい状態です。手元に無いものが原稿に出てくるほうが、あとで困ります。
2. 読者の状態
誰に読ませるかを、職種や業種ではなく状況で書きます。
「マーケティング担当者」ではなく、「上司からAIを使えと言われたが、何から手をつければいいか分からず、社内に相談できる人もいない状態」と書く。前者だと、AIはその職種の一般論を書きます。後者だと、その人がいま困っていることに触れた文章が出てきます。
ここが薄いと、出てくる原稿はどこかで読んだことがあるものになります。
3. 禁止事項
これがいちばん抜けます。書いてはいけないことを、先に渡します。
私たちが毎回入れているのは、次のようなものです。
- 渡した事実に無いことを書かない
- 渡した数字どうしを足したり割ったりして、新しい数字を作らない
- 「必ず」「誰でも」「すぐに」のように、確かめようのない言い切りを使わない
- 実在しない人の声や事例を作らない
4つ目は、指示しないと本当に出てきます。「導入企業の声」という見出しの下に、それらしい会社名と担当者名とコメントが並ぶ。文章としては自然なので、流し読みすると通ってしまいます。これはそのまま出すと嘘になるものなので、禁止事項として先に潰しておきます。
指示の型
実際に使っている指示の形です。個別の原稿ではなく型なので、そのまま持っていって構いません。
あなたはセールスレターの下書きを作ります。
【商品の事実】
(含まれるもの・含まれないもの・渡し方・担当を箇条書きで貼る)
【読んでいる人の状況】
(職種ではなく、いまどういう状態で困っているかを書く)
【この文章で約束すること】
(読み終えた人が何を手に入れられるのか。1行で)
【オファー】
(何を、いくらで、いつまでに、どういう条件で。人が決めたものを貼る)
【書いてはいけないこと】
・上の【商品の事実】に無いことを書かない
・渡した数字を計算して新しい数字を作らない
・確かめようのない言い切り(必ず・誰でも・すぐに)を使わない
・実在しない人の声や事例を作らない
【出力】
約束 → 証拠 → オファー → 締め の順で構成する。
証拠の部分は、上の【商品の事実】から引いたものだけで書く。
足りないと感じたら、埋めずに「ここに証拠が必要」と書いて止める。
最後の1行が効きます。足りないときに埋めさせず、止めさせる。 これを書いておくと、原稿の中に「ここに証拠が必要」という穴が残った状態で返ってきます。穴が見えている原稿のほうが、きれいに埋まった原稿より安全です。埋まっているほうは、どこが作り話なのか探すところから始めることになります。
長い原稿を何度も書き直させると、費用が気になる方もいると思います。同じ材料をくり返し読ませる使い方は、以前より負担が軽くなっています。そのあたりはClaude Fable 5.1 が出たに書きました。
人が直すのは3箇所だけ
出てきた原稿を人が読みます。ここで「良い/悪い」で読まないのが大事なところです。読む場所を決めておきます。
| 直す場所 | 何を見るか |
|---|---|
| 事実の裏取り | 渡していないことが書かれていないか。数字が勝手に作られていないか |
| オファーの条件 | 買う条件が、こちらが決めたとおりに書かれているか |
| 読者の言葉づかい | 読む人が実際に使う言葉になっているか |
事実の裏取り
原稿を上から読んで、渡した【商品の事実】に無い記述に印をつけます。1箇所見つかったら、他も疑ってください。事実を補う癖が出た原稿は、たいてい複数箇所で補っています。
数字はとくに静かに増えます。こちらが渡した数字どうしを足したり割ったりして、新しい数字を作ってくることがあります。文章としては自然なので、読み飛ばすと通ります。渡していない数字が出てきたら、その原稿は直すより捨てるほうが早いというのが、私たちの運用です。
同じ問題は広告文でも起きます。落とし方はChatGPTで広告文を作る手順に書きました。
オファーの条件
ここは直すというより、人が決めたものが、そのまま書かれているかを確認する作業です。
価格、申し込みの期限、返金の条件、対象になる人。AIはこのあたりを「売れやすいように」少しずつ動かします。悪意ではなく、文章として説得力を上げようとした結果です。期限が実際より近く書かれている、条件が実際より緩く書かれている。こういうズレが入ります。
書かれたとおりに履行できないオファーは、出した瞬間に負債になります。 申し込んだ人との約束だからです。だから私たちは、オファーの部分だけはAIに案を出させません。人が決めて、人が書いて、AIにはそれを動かさずに使うよう指示します。
読者の言葉づかい
AIが書く日本語は、整いすぎます。業界の中の言葉で書かれていることも多いです。
読む人が実際に何と呼んでいるか。社内の会議で口に出す言葉はどれか。そこに寄せます。ここは資料を見ても分からないので、人が直すしかありません。
逆に、語尾やリズムは直しません。 気になり始めると時間がいくらあっても足りませんし、直したところで反応はほとんど変わりません。
この進め方が向かないとき
正直に書いておきます。
売るものが決まっていないときには効きません。AIに書かせると、書かせている間は仕事をしている感じがします。でも、オファーが決まっていない状態で出てくるのは、何を買えばいいのか分からない文章です。この場合は、書かせる前に止めて、何をいくらでどういう条件で渡すのかを人が決めるほうが先です。
渡せる事実が手元に無いときも止まります。【商品の事実】に貼るものが無いと、AIは埋めにかかります。禁止事項で止めても、今度は中身の薄い原稿になるだけです。事実の棚卸しが先です。
そしてもうひとつ。この手順は、書く時間を短くしますが、売れるかどうかは変えません。 売れるかどうかを決めるのはオファーと、そのオファーが読者の状況に合っているかどうかです。そこはAIを入れても変わりませんでした。変わったのは、そこに使える時間が増えたことのほうです。
まとめ
- セールスレターは、約束・証拠・オファー・締めの4ブロックでできている
- AIに任せられるのは骨格を順番どおりに読める形へ組むこと。ここは人が手で書くより速い
- 任せられないのは証拠とオファー。どちらもこちら側の事実に属し、手元に無いものはAIには分からない
- 書かせる前に渡すのは3つ — 商品の事実・読者の状況(職種ではなく状況)・禁止事項
- 禁止事項には「実在しない人の声や事例を作らない」を必ず入れる。指示しないと出てくる
- 指示には「足りないと感じたら埋めずに止める」を入れる。穴が見えている原稿のほうが安全
- 人が直すのは3箇所だけ — 事実の裏取り・オファーの条件・読者の言葉づかい
- 渡していない数字が出てきた原稿は、直さずに捨てる。1箇所やった原稿は他でもやっている
- 語尾やリズムは直さない。時間の割に反応が変わらない
- オファーはAIに案を出させない。 履行できない条件が書かれると、申し込んだ人との約束が負債になる
どこまでをAIに任せ、どこから人が持つのかという線の引き方は、AIマーケティング代行は、何を代行して何を代行しないのかに書いています。外に出る直前で人が止める場所をどう設計しているかは、マーケティングを4工程に分け、AIエージェントを配置するにまとめました。
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本記事の内容は2026年9月時点のものです。
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