AGENT 2026.08.16

マーケティングを4工程に分け、AIエージェントを配置する — 全内訳と稼働スケジュール

集客・教育・販売・計測の4工程にどうエージェントを割り当てているか、外に出る直前で必ず止める「承認ゲート」をどう設計しているか、実際に何時に何が走っているか、そして踏んだ失敗まで。自社の運用そのままで公開します。

当社のブログ・メール・SNS・計測は、25体のAIエージェントが動かしています。この記事では、その構造をそのまま公開します。教材として整えた話ではなく、実際に動いているものです。

「AIでマーケティングができます」と言う会社は増えました。ただ、自分たちのマーケティングをAIで回している会社はまだ多くありません。ここに書くのは、提案の裏付けになっている当社自身の運用です。

数字について: 25体は2026年8月時点の実数です。社内のエージェント台帳に登録しているもののうち、投資判断の補助などマーケティング以外の用途で動いているもの役目を終えて止まっているもの他のエージェントの一部を別々に数えていたものは、いずれも数に入れていません。数を大きく見せる意図はないので、数え方まで書いておきます。

4つの工程に、エージェントを配置する

マーケティングを「集客・教育・販売・計測」に分け、それぞれに役割の違うエージェントを置いています。

重要なのは、各工程が素材を受け渡していることです。1本の記事がメールの下書きになり、SNS投稿になり、動画の台本になります。同じ素材を各媒体の形に変換しているだけなので、媒体を増やしても仕事は比例して増えません。

工程担当やっていること
集客SNS投稿投稿文の生成と配信、投稿後の実績データ回収
記事生成ブログ記事の下書き生成と、公開済み記事の素材化
ショート動画長尺の動画・音声から縦型ショート動画を生成
教育メール組版記事から配信用の文面を組み立て、配信システムに下書き作成
入稿原稿からCMSへの入稿、メール下書きまでを一本の流れで通す
販売ファネル登録者の状態に応じてフォローメールを出し分ける
ローンチ販売期間中の個別返信と、工程の進捗管理
計測レポート週次・月次・四半期のレポートを自動生成
SEO / GEO検索と生成AIでの引用状況を月次で計測

※ 代表的なものを挙げています。実際にはこれらが複数体ずつ動いています。

設計の原則は「1エージェント=1責務」

作り始めると「1つのエージェントに全部やらせたい」という誘惑があります。おすすめしません。

当社では、記事を書く/メール用に整える/配信する/結果を測る、をすべて別のエージェントにしています。

分けると得られるもの内容
壊れた場所が特定できる1体が巨大だと、どの工程で失敗したか分からない
差し替えが効く配信ツールを変えても、記事を書く側は触らなくていい
止められる調子の悪い1体だけ止めて、他は動かし続けられる

逆のやり方も試しました。1体に複数の仕事をまとめていた時期がありますが、出力がおかしくなったときに原因の切り分けができず、結局分解して作り直しました。

体数の上限を決めるのは処理能力ではなく、人が確認しなければならない箇所の数です。 25体を1人で回せているのは、エージェントが互いに独立していて、異常が出たものだけが上がってくるからです。

AIが書き、人が承認する

当社のエージェントは、外部に出る直前で必ず止まります。 人が承認して初めて配信・公開されます。AIが単独で世に出すことはありません。

AIが生成  →  受け渡し棚  →  人が承認  →  配信
(下書き)   (置くだけ)  (ここで必ず止まる)(外部へ)
対象AIがやること人がやること
メールマガジン記事から文面を生成し、配信システムに下書き作成読んで送信する
SNS投稿投稿文を生成し、承認ボードに一覧で並べる選ぶ。選ばれた投稿だけが配信される
レポート数値を集計し、次の打ち手を提案する採否を決める。提案は提案のまま

線を引く基準はひとつだけ

「間違えたとき、取り返しがつくか」だけで判断しています。

やり直せるものはAIに任せ、取り返しがつかないものは人が持つ。単純ですが、これ以外の基準を持ち込むと運用が続きません。

そして重要なのは、すべてに承認を挟まないことです。全部に人を通すとAIを入れた意味がなくなります。止めるのは外に出る瞬間だけで、社内で見るだけのレポートや集計は全自動で完結させています。

もうひとつ。ルールを決めるだけでは足りません。「急いでいるから今回だけ」が必ず起きるからです。当社はフォルダ単位で物理的に分けて、構造として承認を飛ばせないようにしています。

AIに任せること、人が持つこと

AIに任せている人が持っている
下書きの生成(何度でもやり直せる)オファーの設計(何を、いくらで、誰に)
定型フォーマットへの整形価格の決定
データの収集・集計・可視化誰に売らないかの判断
同じ素材の各媒体への変換顧客との個別のやり取り
承認済みコンテンツの配信最終的な公開の承認
効果測定と改善案の提示改善案を採用するかの決定

突き詰めると、エージェントに任せているのは「人が決めたことを、速く・大量に・繰り返し実行する」ことだけです。決めるのは常に人です。

ここを取り違えると、AI導入は失敗します。「AIに考えさせる」ところから始めた会社がうまくいかないのは、決める仕事を渡してしまっているからです。

実際の稼働スケジュール

以下は当社で実際に動いている定期実行です。人が手を動かさなくても、この時刻に処理が走ります。

タイミング実行される処理補足
毎日 21:00記事の公開からメール下書きまでを通すDoc → CMS → 配信システムの下書き
毎週月曜 08:00先週のコンテンツ実績レポートを生成媒体別の数値をまとめて通知
毎週月曜 08:15スコアボードを更新指標の推移を記録
毎週月曜 08:30次に書くテーマを提案提案のまま。採否は人が決める
毎週水曜 10:00提案からドラフトを生成承認された企画のみ
毎月1日 09:00月次レポートを生成
四半期ごと四半期レポートを生成1月・4月・7月・10月

※ 時刻は日本時間。生成された成果物はいずれも下書き・提案の状態で止まり、人の承認を経て公開されます。

この表の読み方

月曜の朝に「先週の数字」と「次に書くテーマの提案」が揃い、水曜にはドラフトが出来ている。つまり人がやるのは月曜に数字を見て、テーマを選ぶことだけです。

導入を検討する際は、まずこの「人が判断する時刻」を決めてから、その前後に何を自動で走らせるかを考えると設計しやすくなります。

最初の1体は、この3条件で選ぶ

導入で最も多い失敗は、いちばん難しいところから手をつけることです。「AIに戦略を考えさせたい」から始めると、たいてい止まります。

条件理由
① 毎週必ず発生する月1回の作業を自動化しても効果が見えず、熱が冷める
② 正解の形が決まっているレポート・下書き・集計など。間違いに気づける
③ 間違っても致命傷にならない人が確認してから世に出るもの

当社が最初にレポート系を選んだ理由は単純で、間違いに気づきやすいからです。数字が明らかにおかしければすぐ分かります。文章と違って「なんとなく良さそう」で通ってしまうことがない。

そして出力先まで繋ぐこと。生成まではできても人がコピペしているなら、それはまだ自動化ではありません。

実際に踏んだ失敗と、そこから作ったルール

うまくいった話より、こちらのほうが役に立つはずです。正直に書きます。

失敗そこから作ったルール
計測データを取りこぼした
SNS投稿の識別子を保存し忘れ、一定期間の実績が引けなくなった
作る前に「何を残すか」を決める。動かすことに集中すると、残すことを忘れる
承認を挟まず外部へ書き込ませた
取り消しの効かない状態を作った
取り消せない操作の前には必ず人を挟む。線は構造として引く
全体像を把握している人間がいなくなった
別々のツールで別々に作り、何が動いているか分からない時期があった
エージェントを作ったら台帳に1行足す。台帳にないものは存在しないものとして扱う
1体に複数の仕事をまとめた
出力がおかしくなったとき原因を切り分けられなかった
1エージェント=1責務。分解して作り直した

4つとも、「動かすこと」を優先して「あとで困ること」を後回しにした結果です。AI導入は最初の数体が驚くほど早く動くので、この罠にはまりやすい。

逆に言えば、着手前に次の3つを決めておくだけで、大半は避けられます。

  1. 何を見て良し悪しを判断するか(計測指標)
  2. 何のデータを残すか(記録項目)
  3. どこで人が承認するか(承認の線)

この構成をそのまま真似すると、どこで詰まるか

ここまでの表を見て同じものを作ろうとすると、たいてい次の3つで止まります。

1. 受け渡し棚を作らずに始める 生成はできても、置き場所と承認の線が無いと、結局その都度人がコピペすることになります。フォルダを分けるだけの話ですが、最初に決めておかないと後から直すのが大変です。

2. 素材の受け渡しを設計していない 各エージェントを個別に作ると、記事は記事、SNSはSNSで別々に素材を用意することになり、仕事が減りません。1本の素材を何回変換できるかが効率を決めます。

3. プロンプトに業務知識が入っていない 「良い記事を書いて」では良い記事は出ません。誰に、何を、どういう順番で伝えると売れるのか——その型が頭の中にしかない状態では、エージェントは作れません。ここで必要なのはAIの知識ではなく、マーケティングの知識です。

なぜ公開しているのか

当社がご提案する内容は、すべてこの運用から出ています。うまくいったこともあれば、失敗して作り直したものもあります。その両方を踏まえた設計を、貴社の業種・商材に合わせてご提案しています。

実際に動いている画面をお見せしながら説明できることが、当社の一番の違いです。


本記事の内容は2026年8月時点のものです。

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