企画書をAIに書かせるとき、任せてはいけない3つ — 数字・約束・固有名詞は人が入れる
Google ドキュメントやNotionに入っているAIで企画書を作ると、もっともらしい数字や約束が混ざります。任せてよいのは構成と言い回し、任せないのは数字・約束・固有名詞。その線の引き方と、確認する順番を整理します。
「企画書の下書きはAIに作らせています。早いし、体裁も整っている」。こうしたお話を聞くことが増えました。
使い方として、私たちも賛成です。白紙から書き始めるより、たたき台があるほうがずっと速く進みます。
ただ、体裁が整っていることと、中身が正しいことは別の話です。文書作成ツールに入っているAIは、頼まれれば数字も、効果の見込みも、他社の事例も、それらしく書きます。そして整った文書の中に混ざった誤りは、雑な文書の中の誤りより見つけにくいのです。
結論を先に書きます。
- 企画書のうち、AIに任せてよいのは構成と言い回しです
- 任せてはいけないのは数字・約束・固有名詞の3つです。これは人が入れるか、人が出典を確かめます
- 確認は数字 → 約束 → 構成の順で行います。構成から読み始めると、読みやすさに引っ張られて数字を見落とします
先に、言葉を揃えます
| 言葉 | この記事での意味 |
|---|---|
| 文書作成ツールのAI | Google ドキュメントやNotionなど、ふだん文書を書く画面の中で呼び出せるAI。「続きを書いて」「整えて」と頼める |
| 企画書 | 社内の稟議や、取引先への提案に使う文書。誰かに「やる・やらない」を決めてもらうためのもの |
| 約束 | 企画書の中で「〜できます」「〜まで終わります」と、相手に期待させている部分 |
| 固有名詞 | 会社名・商品名・人名・制度名など、実在するものを指す言葉 |
| もっともらしい誤り | 文としては自然で、それらしく見えるが、事実ではない記述 |
なぜ企画書は、AIの誤りがいちばん高くつく文書なのか
メールの下書きや社内メモなら、多少の誤りは読む人が気づいて直します。企画書は違います。読む人が判断を下すための文書だからです。
企画書に書かれた数字は、読む人にとって「確かめ済みの前提」に見えます。上司や取引先は、その数字を疑うより、その数字の上で「やるかどうか」を考えます。誤りが判断の土台に入り込むので、あとから見つかったときに、企画そのものの信用が崩れます。
しかもAIは、空欄を空欄のまま残すのが苦手です。「市場規模を入れて」「効果の見込みを書いて」と頼めば、手元に根拠がなくても何かを書きます。そこに悪意はありません。自然な文章を作る仕組みが、そのまま働いているだけです。
任せてはいけない3つ
1. 数字
企画書でいちばん多い誤りは、数字です。典型的な混ざり方は次のとおりです。
- 市場規模や業界の平均値。 出典の書かれていない、それらしい数字が入る。調べたように見えるが、どこにも元がない
- 効果の見込み。 「導入すると作業時間が◯割減ります」といった見込みが、根拠なしに書かれる
- 自社の過去の実績。 社内の資料を読ませていない場合でも、過去の実績らしき数字が書かれることがある
- 計算の結果。 正しい数字どうしを掛けたり割ったりした結果が、途中で間違っている
最後の1つは見落とされがちです。元の数字が正しくても、AIが途中の計算を誤ることがあります。計算結果は、元の数字から自分で計算し直すのが安全です。
数字の扱いは、ルールを1つ決めるだけでずいぶん変わります。私たちが使っているのは「出典を言えない数字は、企画書に入れない」です。AIが書いた数字も、人が書いた数字も同じ扱いにします。言えないなら、その箇所は「要確認」と書いて空けておきます。
2. 約束
次に危ないのが、相手に期待させる言い回しです。
- 「〜まで対応します」「〜日で完了します」といった、範囲と期限
- 「必ず」「確実に」「大幅に」といった、効果を強く言い切る言葉
- 「追加費用なしで」「サポート付きで」といった、条件の付け足し
AIは、企画書を「通りやすく」しようとして、言い回しを強めがちです。読みやすく前向きな文章ほど、約束の範囲が広がっています。
取引先に出す企画書の約束は、そのまま契約の前提になります。書いた本人が実行できない約束は、文章がどれだけ自然でも削ります。社内の稟議でも同じです。「この企画で何が約束されているか」を、承認する人は読み取ろうとします。
3. 固有名詞
会社名・商品名・制度名・人名も、人が確かめます。
- 他社の事例として、実在しない取り組みが書かれる
- 実在する会社に、その会社がしていないことが結びつけられる
- 制度やガイドラインの名前が微妙に違う、または古い版のまま
特に「他社ではこうしています」という事例は、企画書を説得力のあるものに見せるので、AIが書き足しやすい部分です。出典を開いて確かめられない事例は、入れないのが原則です。実在する会社について事実でないことを書けば、その会社にも迷惑がかかります。
任せてよい部分
逆に、AIに任せて困らない部分ははっきりしています。
| 任せてよい | 理由 |
|---|---|
| 構成(見出しの順番) | 誤っても読めば分かり、直すのも簡単 |
| 言い回しの整理 | 意味を変えずに読みやすくする作業は得意 |
| 要約・短縮 | 元の文章が手元にあるので、照らし合わせられる |
| 抜けの指摘 | 「この企画書に足りない観点は」と聞くと、検討漏れに気づける |
| 想定問答 | 読む人が聞きそうな質問を出させ、答えは人が書く |
共通しているのは、誤っていても読めば気づけることです。線をどこで引くかを迷ったら、「間違っていたとき、読み返して気づけるか」で判断してください。この考え方は、AIマーケティング代行は、何を代行して何を代行しないのかで書いた「取り返しがつくか」という基準と同じです。
確認は「数字 → 約束 → 構成」の順で
AIが下書きした企画書を確認するとき、順番が大切です。
1. まず数字だけを拾う
本文を頭から読むのではなく、数字だけを探して一覧にします。それぞれに出典が言えるか、計算は合っているかを確かめます。出典が言えないものは消すか、「要確認」にします。
頭から読むと、文章の流れが自然なので、数字を「確かめ済み」と思い込みやすくなります。数字だけを切り離して見ると、根拠のないものが浮かび上がります。
2. 次に約束を拾う
「〜します」「〜できます」と言い切っている文を拾い、実行する人がそれを引き受けられるかを確かめます。範囲・期限・条件のどれかが、自分たちの想定より広がっていないかを見ます。固有名詞も、このときに一緒に確かめます。
3. 最後に構成と言い回し
中身が正しいと確かめてから、読みやすさを見ます。ここはAIに直させても構いません。ただし、直させたあとに数字と約束が書き換わっていないかだけは、もう一度見てください。言い回しを整える過程で、言い切りが強まることがあります。
指示の段階でできること
確認の手間は、AIに頼む段階でかなり減らせます。
- 数字を書かせない指示を入れる。 「数字が必要な箇所は【要確認】と書き、数字そのものは書かないでください」
- 使ってよい事実を先に渡す。 自社の実績や出典つきの数字を一覧にして渡し、「この一覧にない数字は使わない」と書く
- 事例を書かせない。 「他社事例は書かないでください」と明記する
この形は、私たちがこのサイトの記事づくりや、セールスレターをAIに書かせるときにも使っている考え方です。AIの文章力を信用しないのではなく、AIに判断させる範囲を最初から狭くしておくということです。
まだ言えないこと
- Google ドキュメントのAIとNotionのAIのどちらが企画書づくりに向いているか。私たちは両方を同じ条件で比べていないので、言える立場にありません
- 指示を工夫すれば数字の誤りが完全になくなるか。減らせることは確かですが、なくなるとは言えません。だから確認の工程は残します
まとめ
- 企画書は読む人が判断を下す文書なので、AIの誤りがいちばん高くつく
- 任せてよいのは構成と言い回し。任せないのは数字・約束・固有名詞の3つ
- 「出典を言えない数字は入れない」というルールを、AIにも人にも同じように当てる
- 確認は数字 → 約束 → 構成の順。頭から読むと、読みやすさに引っ張られて誤りを見落とす
- 指示の段階で「数字は書かずに【要確認】と書く」と頼めば、確認の手間は減らせる
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本記事の内容は2026年9月時点のものです。
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