Microsoft Clarity で、LPのどこを直すか決める手順 — 録画を全部見るのをやめて、候補を機械に出させる
申し込みページのどこを直すかを、感覚ではなく読まれ方で決める手順です。Microsoft Clarityの「冒頭で帰った人」「どこまで読まれたか」「録画」の3つをどの順で見るか、GA4との分担、そして直す候補をAIに出させて人が選ぶ形にした理由を書きます。
申し込みページ(LP)の改善は、「どこを直すか」を決めるところでいちばん時間がかかります。直す作業そのものより、決めるほうが重いのです。
この記事では、無料の計測ツール Microsoft Clarity を使って「直す場所」を決めている手順を、そのまま書きます。
先にお断りしておきます。離脱率やスクロール率などの実数は、この記事には書きません。 書くのは、何を・どの順で見て・誰が決めているか、という手順と判断の基準です。
結論を先に書きます。
- 見る順番を固定する。 「冒頭で帰った人」→「どこまで読まれたか」→「録画」の順。録画から見始めると、時間だけが消えます
- 役割を分ける。 LPの中で何が起きたかはClarity、LPの外(どこから来て、申し込んだか)はGA4で見る
- 候補を出すのは機械、選ぶのは人。 録画を全部見て気づく方式をやめ、直す候補をAIに挙げさせて、人が採否を決める形にしています
先に、言葉を揃えます
| 言葉 | この記事での意味 |
|---|---|
| LP | 広告や検索から来た人が最初に着地して、申し込みや資料請求をするためのページ |
| Microsoft Clarity | Microsoftが無料で提供している計測ツール。ページの上で人がどう動いたか(どこを押し、どこまで下へ読み進めたか)を記録する |
| GA4 | Googleアナリティクスのこと。どこから何人来て、何人が申し込んだか、というサイト全体の流れを見るツール |
| 訪問(セッション) | 1人の人がサイトに来てから離れるまでの、ひとまとまりの行動 |
| ヒートマップ | ページのどこがよく押され、どこまで読まれたかを、色の濃さで重ねて見せる図 |
| 録画 | 実際の訪問者の画面の動き(スクロールやクリック)を、あとから動画のように再生できる機能。入力内容などは伏せた状態で記録される |
| スクロール到達 | ページを上から下へ読み進めたとき、どの位置まで到達した人がどれくらいいるか |
なぜ「どこを直すか」で止まるのか
LPを直そうとすると、たいてい次のどちらかになります。
- 全体を作り直す。 どこが悪いか分からないので、全部変える。何が効いたのかが分からないまま、次の改善もまた全部変えることになる
- 気になるところを直す。 社内で「見出しが弱い気がする」と言った人の意見が通る。直したあと、良くなったかどうかを誰も確かめない
どちらも、「読まれ方」を見ずに決めていることが原因です。Clarityは、この「読まれ方」を無料で見せてくれます。ただし、見られるものが多すぎて、今度は見ることに時間を取られます。だから順番を決めています。
見る順番 — 3段で絞り込む
1段目:冒頭で帰った人がどれくらいいるか
最初に見るのは、ページを開いてすぐ離れた人です。Clarityのダッシュボード(全体の概要画面)には、すぐに前のページへ戻った訪問や、ほとんど動かずに離れた訪問が集計されています。
ここが多いなら、直す場所はページの上のほうです。具体的には次のどれかです。
- 広告や検索の文言と、LPの見出しが合っていない(期待と違うものが出てきた)
- 最初の画面に、誰のための何のページかが書かれていない
- 表示が遅い、または画像が崩れている
この段階では、下のほうの文章は直しません。 上で帰っている人は、下を読んでいないからです。
2段目:どこまで読まれたか
冒頭を通過した人がいるなら、次にスクロール到達を見ます。ヒートマップで、どこから急に色が薄くなるか(=そこで読むのをやめた人が多いか)を探します。
私たちがここで確認しているのは、次の2つだけです。
| 確認すること | 読み方 |
|---|---|
| 申し込みボタンより手前で、大きく減っていないか | 減っているなら、ボタンまでの間に「読む理由」が切れている。その区間の中身を疑う |
| 申し込みボタンの位置まで読まれているのに、押されていないか | 読まれているのに押されないなら、文章ではなく申し込みの条件や、ボタンまわりの説明を疑う |
ここで「どの区間か」が決まれば、直す場所はほぼ特定できます。
3段目:録画は「確かめる」ためだけに見る
録画は最後です。2段目で怪しいと分かった区間で、人が何をしているかを確かめるためにだけ見ます。
- 押せないところを何度も押していないか(リンクに見える飾りなど)
- 同じ場所を行ったり来たりしていないか(説明が分かりにくい)
- スマートフォンで、表や画像がはみ出していないか
録画を最初から見ると、1本ずつは面白いのですが、何本見ても「直す場所」が決まりません。仮説を持たずに録画を見るのは、いちばん時間を消す使い方だと考えています。
GA4との役割分担 — LPの中と外
ClarityとGA4は、見ている範囲が違います。どちらか片方で全部を見ようとすると、判断を誤ります。
| Clarity | GA4 | |
|---|---|---|
| 見ている範囲 | LPの中での動き | LPの外も含めた流れ |
| 答えられる問い | どこで読むのをやめたか、何を押そうとしたか | どこから来たか、最終的に申し込んだか |
| 答えられない問い | その人が申し込んだかどうか(設定しない限り) | ページのどこで迷ったか |
私たちは、「申し込みが減った」という事実はGA4で確かめ、「なぜ減ったか」の手がかりはClarityで探す、という順で使っています。Clarityだけを見て「読まれていないから悪いページだ」と決めることはしません。そもそも来ている人が違えば、読まれ方は変わるからです。
「見てから直す」をやめて、「候補を出させて選ぶ」にした
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。
担当者が画面を見て、気づいたことを直す。いちばん自然なやり方ですが、この方式には2つ問題があります。
- 見る人によって、気づく場所が違う。 同じ画面を見ても、結論がばらばらになる
- 見る時間が取れない週は、改善が止まる。 忙しいと真っ先に後回しになる作業です
そこで今は、Clarityのデータを読んで「直す候補」を挙げるところまでをAIエージェントにやらせています。 エージェントとは、決まった仕事を人の代わりに繰り返し実行するAIの仕組みのことです。上に書いた3段の順番で数字を読み、「冒頭で帰る人が多い」「この区間で読むのをやめている」といった候補を、理由と一緒にレポートにまとめます。
人がやるのは、そのレポートを読んでどれを直すか選ぶことだけです。
| 誰がやるか | やること |
|---|---|
| AIエージェント | データを読む。3段の順番で候補を挙げる。なぜそこが怪しいかを添える |
| 人 | 候補のうちどれを直すか選ぶ。直した結果を次のレポートで確かめる |
この線は、私たちの他の運用と同じです。数字を集めて要約するところまではAIに任せ、次に何をするかの採否は人が決めます。 広告の運用でも同じ線を引いています(Meta広告で何を任せて何を任せないか)。
AIに直すところまで任せない理由は単純です。LPの文章は「約束」を含みます。何を約束するかは事業の判断で、そこを機械に決めさせると、読まれ方は良くなっても、守れない約束が増えることがあります。
正直に書いておくこと
この仕組みには、まだ穴があります。
- Clarityとエージェントをつなぐ接続先は、いまのところ別サイトのプロジェクトです。 Clarityでは、計測するサイトごとに「プロジェクト」という単位でデータが分かれています。このサイト(ai-marketing.co.jp)のプロジェクトは作ってありますが、エージェントからはまだ読めません。このサイトについては、人がブラウザで画面を開いて見ています
- 訪問が少ないうちは、候補の根拠も弱い。 数件の動きから「ここが悪い」と言い切ることはできません。訪問が少ない時期のレポートは、候補の一覧として読み、決め手にはしていません
仕組みを入れても、数字が少なければ判断の質は上がりません。そこは道具では解決しない、と考えています。
導入するときに、先に決めておくこと
Clarityは入れるだけならすぐに使えます。ただ、入れる前に次の3つを決めておくと、あとで困りません。
- どのページを見るか。 サイト全体を眺めても候補は出ません。申し込みにつながるページを先に決めます
- 何が起きたら直すか。 「冒頭で帰る人が増えたら上を直す」のように、見る順番と直す場所の対応を先に決めておきます
- 個人情報の扱い。 Clarityは入力欄の中身などを伏せて記録する設定が標準ですが、自社のページで実際にどう記録されているかは、一度録画を開いて確かめてください。プライバシーポリシーに計測ツールの利用を書いておくことも忘れずに
作り始める前に「何を見て、何を残し、どこで人が決めるか」を決めておく、という考え方は、AIエージェントを4工程に配置した記事でも書きました。LPの改善も、まったく同じです。
まとめ
- LPの改善でいちばん重いのは、直す作業ではなく「どこを直すか」を決めること
- Clarityは「冒頭で帰った人」→「どこまで読まれたか」→「録画」の順で見る。録画は仮説を確かめるためだけに使う
- LPの中の動きはClarity、どこから来て申し込んだかはGA4。片方だけで判断しない
- 直す候補を挙げるのはAIエージェント、どれを直すか選ぶのは人。約束を含む文章の判断は機械に渡さない
- 訪問が少ないうちは、候補は候補として読む。道具を入れても、数字が少なければ判断は強くならない
AIに仕事を任せるときに私たちが実際につまずいた場所は、AIエージェント運用でつまずいた7つの場所にまとめています。LPの画像を社内で作るときの設定は、LPの画像を社内で作るをご覧ください。
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本記事の内容は2026年9月時点のものです。
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