AIに自社名を聞くと事業内容が間違っている — 情報を1つに揃えるための手順
ChatGPTに自社のことを聞くと、事業内容や設立年が違う。この「ズレ」は文章力ではなく、社外に散らばった表記の不一致が原因です。何を正とし、どこを直せばいいのかを、自社でやった順番のまま書きます。
生成AI(文章で質問すると文章で答えてくれるAI。ChatGPTやGeminiなど)に自社名を入れて聞いてみると、事業内容がずれている。設立年が違う。別の会社と混ざっている。取引先に「AIに聞いたらこう出ましたけど」と言われて初めて気づく。
この相談が増えています。結論から書きます。この現象は、AIの性能の問題ではなく、自社の情報が外に散らばったまま食い違っていることの結果です。 そして直し方は、記事を書くことでも広告を出すことでもなく、**「正しい情報を1つに決めて、置いてある場所を全部そこに合わせる」**という、地味な棚卸しです。
私たちが自社と関連サイトで実際にやった順番のまま書きます。
そもそも、AIは自社をどう認識しているのか
先に言葉を揃えます。この分野で「エンティティ」という言い方をしますが、噛み砕くと**「AIが、ある名前をひとつの実体としてまとめて覚えている、その塊」**のことです。
「AIマーケティング株式会社」という文字列を見たとき、AIの側では次のような判断が起きています。
| AIがやっていること | 具体的には |
|---|---|
| 名前を実体に結びつける | この文字列は、会社という一つのものを指しているのか、それとも一般的な言葉の並びか |
| 同じ実体の情報を集める | 別々のページに出てくる同じ名前を、同じ会社のこととして束ねられるか |
| 食い違いを解消する | 設立年がAでは2020年、Bでは2021年。どちらを採用するか |
| 確信度を決める | 束ねきれない、食い違いが多い場合は「よく分からない」扱いになる |
問題は最後の行です。AIは、確信が持てないときに「分かりません」とは言わず、一般論で埋めます。 社名から連想できるそれらしい事業内容を書いてしまう。これが「事業内容が間違っている」の正体です。悪意ある誤りではなく、材料不足の埋め合わせです。
つまり、こちらがやるべきなのは反論することではなく、材料を一致させることです。
手順1: いま何と答えられているかを、書き出す
最初にやるのは修正ではなく、記録です。生成AIをいくつか開いて、次のような聞き方を変えながら試します。
- 「○○株式会社について教えてください」
- 「○○(社名)は何をしている会社ですか」
- 「○○(社名)の代表者は誰ですか」
- 「○○(社名)の設立はいつですか」
そして返ってきた文章をそのまま貼り付けて保存します。 要約しないでください。どの項目がどうずれているかを後で照合するので、原文が要ります。
このとき、ずれている項目にひとつずつ「どこを見てそう書いたと思われるか」を当てていきます。たいていは自社サイトではなく、求人サイト、名刺交換サービス、古いプレスリリース、業界名鑑のような自分で更新していない場所が出どころです。
手順2: 「これが正」の1枚を作る
次に、社内で唯一の正解を決めます。私たちは次の項目を1枚のファイルにまとめました。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 社名 | 「株式会社」が前か後か。英字表記。略称を使うか |
| 設立 | 年月。登記と一致しているか |
| 所在地 | 建物名・階数まで書くか、統一する |
| 代表者名 | 漢字表記、読み仮名、英字表記 |
| 事業内容 | 一文で言い切る形。ここは長く書かない |
| 実績の数え方 | 何を1件と数えるか(後述) |
| 主要な事業サイト | 自社が運営しているサイトを列挙する |
ここでいちばん揉めるのが最後から2番目、実績の数え方です。私たちは自社で稼働しているAIエージェントを28体と書いていますが、これは台帳の行数そのままではありません。二重に登録されていた行、事業と関係ない用途、止めているもの、まだ作っていないものを外した実数です。
数え方を決めずに数字だけ出すと、別の資料では別の数になります。AIは食い違いを見つけると、その項目ごと採用しません。 数字を載せるなら、定義を先に固定してください。
手順3: 置いてある場所を、全部合わせにいく
正が決まったら、外に出ている場所を洗い出して揃えます。優先順位はこの順です。
- 自社サイトの会社概要ページ — ここが食い違っていると他が全部崩れます
- 構造化データ — 検索エンジンやAIが機械的に読めるように、ページの裏側に埋めておく決まった書式のデータのこと。会社名・所在地・代表者・サイトURLを書く欄があります
- llms.txt — AI向けに自社を説明する一枚のテキストファイル。書き方はllms.txt の書き方にまとめました
- SNSのプロフィール欄 — 社名表記と事業内容の一文。ここは古いまま放置されがちです
- 自分で更新していない外部の掲載 — 手順1で見つかったもの。修正依頼が要るので時間がかかります。時間がかかるからこそ、早く着手します
関連する複数のサイトを持っている場合は、そこも揃えます。 私たちは事業ごとに別のサイトを運営していますが、代表者名の表記と事業内容の一文は、どのサイトでも同じ文言にしてあります。別会社に見えると、それぞれの情報が弱いまま分かれて残ります。
効くところと、効かないところを分けて考える
ここは正直に書きます。この作業で改善するのは「社名や人名で聞かれたとき」です。サービスを探している人の質問に引用されるかどうかは、別の問題です。
私たちは関連サイトのAI引用状況を計測しています。監視している18クエリのうち、生成AIの回答に引用されたのはごく一部でした。しかも引用されたものはすべて、社名・人名で聞かれた質問です。一方で「AI活用 マーケティング 会社」のような、サービスを探すための一般的な質問では引用がありませんでした。
この計測の対象は関連サイトのうち2つで、ai-marketing.co.jp はまだ監視に入っていません。1回目の計測なので、増えているか減っているかもまだ言えません。
それでも言えることがひとつあります。エンティティを揃える作業は「指名で聞かれたときに正しく答えさせる」ための投資であって、「知らない人に見つけてもらう」ための投資ではありません。 前者は、すでに自社の名前を知っている見込み客・取引先・採用候補者が調べたときに効きます。後者を伸ばすには、質問そのものに答える記事が要ります。両方の違いはSEOとGEOの違いに書きました。
順番としては、指名で正しく答えられる状態を先に作るほうが安全です。名前を知られていない段階で見つけてもらっても、調べた先で情報が食い違っていれば、そこで止まります。
まだ言えないこと
- どのくらいの期間で反映されるのか。私たちの計測では、直してから回答が変わるまでの日数を追い切れていません
- どの情報源をAIが重く見ているのか。公式サイトが最優先とは限らず、外部の掲載が残ることがあります
- 修正依頼に応じてもらえない外部サイトが残ったとき、どこまで影響するのか
いずれも確認できていないので、断定しません。
まとめ
- AIが自社の事業内容を間違えるのは、性能の問題ではなく、外に散らばった情報が食い違っていることの結果
- AIは確信が持てないと「分かりません」ではなく、それらしい一般論で埋める
- まず、いま何と答えられているかを原文のまま記録する。要約しない
- 社名・設立・所在地・代表者名・事業内容の一文・実績の数え方を、1枚に決める
- 実績は「何を1件と数えるか」まで固定する。定義がずれると、その項目ごと採用されなくなる
- 直す場所の優先順位は、会社概要ページ → 構造化データ → llms.txt → SNSプロフィール → 外部掲載
- この作業が効くのは「指名で聞かれたとき」。サービスを探す質問への対策は別の仕事
サイトそのものを更新が止まらない形に組み直した経緯はなぜ自社サイトをAIで作り直したのかに、AI向けの説明ファイルの実物はllms.txt の書き方に書いてあります。
自社の情報をどこまで整えるべきか、どこから手をつけるかを社内で詰めている段階なら、無料レポート『AIエージェント導入の実際』が使えます。A4・全11ページ、自己診断シート付きで/report/から受け取れます。今日書いた棚卸しを、自社のどの順番でやるか決める材料になるはずです。
本記事の内容は2026年9月時点のものです。
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