AIエージェントを自作するか、頼むか — Dify・n8nを触る前に決める3つのこと
Difyやn8nを使えば、AIエージェントは社内でも作れます。では自作と外注はどこで分かれるのか。道具の比較ではなく、業務の知識を書ける人がいるか、止まったとき直せるか、結果の行き先までつながっているかの3つで判断する方法を整理します。
「Difyやn8nなら、社内でもAIエージェントが作れるらしい。外注しなくていいのでは」。こうしたご相談を受けることが増えました。
半分は正しいと思います。いまは画面上で部品をつなぐだけで、AIに調べものをさせ、文章を書かせ、ほかのアプリに結果を渡すところまで組めます。作ること自体の難しさは、数年前とは比べものになりません。
ただ、作れることと、仕事として回り続けることは別の話です。自作にするか、外に頼むかの分かれ目は、道具の使いやすさではなく、作ったあとに社内に残る仕事を引き受けられるかどうかにあります。
結論を先に書きます。
- 自作か外注かは、道具を選ぶ前に決めます。道具は、その答えに合わせて選ぶものです
- 判断の軸は、業務の知識を言葉にできる人がいるか/止まったときに直せるか/結果の行き先までつながっているかの3つです
- 3つとも社内で持てるなら自作が向いています。1つでも欠けるなら、欠けた部分だけを外に頼む形が現実的です
先に、言葉を揃えます
| 言葉 | この記事での意味 |
|---|---|
| AIエージェント | 決まった手順をなぞるだけでなく、途中の判断(どの資料を読むか、どう書くか)もAIが行いながら、仕事を最後まで進める仕組み |
| Dify(ディファイ) | AIを組み込んだ仕組みを、画面上で部品をつないで作れる道具 |
| n8n(エヌエイトエヌ) | アプリとアプリの間の作業を自動にする道具。AIを部品の1つとして組み込める |
| 指示書(プロンプト) | AIに渡す「何を、どういう基準で、どんな形で出すか」を書いた文章 |
| 連携 | AIが出した結果を、メール配信や顧客管理などほかのアプリへ自動で渡すこと |
アプリ同士をつなぐ自動化そのものの道具選びは、Zapier・Make・n8nの違いにまとめています。この記事は、その手前の「そもそも自分で作るのか」の話です。
なぜ「道具を触る前」なのか
Difyもn8nも、無料や少額で試せます。だから多くの会社が、まず触ってみるところから始めます。それ自体は悪くありません。
困るのは、試しに作ったものが、いつの間にか本番の仕事を担っているときです。作った人は善意で、業務を少し楽にしたかっただけ。ところがその仕組みに顧客向けのメールの下書きや、営業への引き渡しが乗り始めると、止まったときの影響が急に大きくなります。そして、中身を知っているのは作った人だけ、という状態ができあがります。
自作か外注かを先に決めておけば、「試しに作ったもの」を本番に載せる前に、誰が面倒を見るのかを決める場面が自然に生まれます。順番を逆にすると、その場面が来ません。
判断の軸は3つ
1. 業務の知識を言葉にできる人がいるか
AIエージェントの出来を決めるのは、道具ではなく指示書の中身です。そして指示書に書くべきことは、AIの知識ではなく、自社の業務の知識です。
- 自社の顧客は、どんな言葉に反応し、どんな言葉を嫌うか
- この仕事の「良い出来」と「悪い出来」は、どこで分かれるか
- 絶対に書いてはいけないこと、言ってはいけないことは何か
これは外部の会社には書けません。聞き取って形にすることはできても、元になる判断は社内にしかないからです。ここが言葉にできない会社は、自作でも外注でも、エージェントの出来は上がりません。
逆に言えば、業務の知識を言葉にできる人が社内にいれば、外注した場合でもその人が中心になります。自作か外注かより先に、その人が誰かを決めてください。
2. 止まったときに直せるか
エージェントは、組んだ日がいちばん正しく動く日です。そのあと、つなぎ先のアプリの仕様が変わる、使っているAIのモデルが新しくなる、業務の手順が変わる、といった理由で少しずつずれていきます。
ここで確かめるべきは、次の点です。
- 結果がおかしくなったとき、指示書が悪いのか、つなぎ方が悪いのか、元の情報が悪いのかを切り分けられる人がいるか
- 直した結果がもっと悪くなったとき、前の状態に戻せるか
- 作った人が異動や退職でいなくなっても、別の人が中身を読めるか
AIを使った仕組みには、ふつうの自動化にない難しさがあります。エラーで止まらずに、もっともらしい間違いを出し続けることがあるのです。止まったことに気づくより、間違いに気づくほうがずっと難しい。私たちが自社の運用で実際に踏んだつまずきは、AIエージェント運用でつまずいた7つの場所に書いています。
3. 結果の行き先までつながっているか
社内で作ったエージェントがよく止まる場所は、実はAIの部分ではありません。出した結果を、次の仕事に渡す部分です。
たとえば、AIがメルマガの下書きを上手に書けたとしても、それを誰かが手で配信システムに貼り付けているなら、忙しい週には貼られずに終わります。広告の改善案をAIが毎週出しても、それを読んで設定を変える人と手順が決まっていなければ、案は溜まるだけです。
確かめるべきは次の点です。
- 結果が、次に使う場所(配信システム、顧客管理、広告の管理画面など)まで自動で届くか
- 届かないなら、誰が、いつ、手で渡すのかが決まっているか
- 外に出る直前で、人が確認して止められる場所があるか
この3つ目、外に出る前に人が止める場所をどこに置くかは、作る技術より設計の判断です。私たちの置き方はマーケティングを4工程に分け、AIエージェントを配置するに書いています。
判断の目安
3つの軸を組み合わせると、次のような目安になります。
| 自社の状況 | 合いやすい形 |
|---|---|
| 3つとも社内で持てる | 自作。外部は、詰まったときの相談先として使う |
| 業務の知識は書けるが、直せる人がいない | 作るのは社内、保守と監視を外に頼む |
| 直せる人はいるが、業務の知識が言葉になっていない | 道具より先に、業務の手順と良し悪しの基準を書き出す |
| 行き先のつなぎ込みが難しい | つなぎ込みの部分だけを外に頼む |
| 業務の知識を書ける人がいない | 自作も外注もまだ早い。その人を決めるのが先 |
最後の行がいちばん大事です。ここを飛ばして外注すると、外部の会社は「それらしいもの」を納めることはできても、自社の判断が入っていないので、使われなくなります。
私たちは自作している。ただし、勧めはしない
正直に書きます。私たちは自社のエージェントを、Difyやn8nではなく自前のプログラムで作り、自分たちで運用しています。
それができるのは、業務の知識を書く人と、プログラムを読んで直す人が同じチームにいて、しかもマーケティングの実務そのものが本業だからです。3つの軸のどれも、たまたま社内で持てていた。それだけのことで、自作が正解だという話ではありません。
むしろ、同じことを本業の合間に担当者1人で始めると、先に書いた「中身を知っているのが作った人だけ」の状態をつくりやすくなります。私たちのやり方は、条件がそろっている会社にとっての一例として読んでください。
外に頼むときに確かめること
一部でも外に頼むと決めたら、契約の前に次を確かめておくと安全です。
- 指示書と設定は、自社で読める形で手元に残るか
- 使う道具のアカウントは自社の名義か
- 間違いが出たとき、誰が、どうやって気づく仕組みになっているか
- 契約が終わったあと、社内で引き継げる形で渡してもらえるか
相談先の見分け方は、AIエージェント導入を頼める会社の見分け方に、外に出してよい仕事の線の引き方はAIマーケティング代行は、何を代行して何を代行しないのかにまとめています。
まだ言えないこと
- Difyとn8nのどちらがエージェント作りに向いているか。私たちはどちらも自社で本格運用していないので、比べる立場にありません
- 自作と外注のどちらが安くつくか。社内の人の時間をどう数えるかで答えが変わるので、一般論では言えません
まとめ
- 自作か外注かは、道具を触る前に決める。試しに作ったものが本番を担い始めてからでは遅い
- 判断の軸は、業務の知識を言葉にできる人がいるか、止まったときに直せるか、結果の行き先までつながっているかの3つ
- AIを使った仕組みは、止まるより「もっともらしい間違いを出し続ける」ほうが怖い
- 3つとも社内で持てれば自作、欠けているなら欠けた部分だけを外に頼む
- 業務の知識を書ける人がいないなら、自作も外注もまだ早い
エージェントを業務に入れる全体の流れはAIエージェントをマーケティングに導入する完全ガイドにまとめています。
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本記事の内容は2026年9月時点のものです。
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