NEWS 2026.09.20

HubSpotが「AIが最後までやる」側に舵を切りました — 効き目を決めるのは道具ではなく自社のデータ

2026年9月、HubSpotが秋の大型アップデートを発表しました。AIが案を出すところまでではなく、キャンペーンの計画から制作までを引き受ける形です。何が試験提供で、何がまだ確認できないのか。そして乗り換えを考える前に自社で決めておくことを整理します。

HubSpotが「AIが最後までやる」側に舵を切りました — 効き目を決めるのは道具ではなく自社のデータ — AIマーケティング株式会社

「AIが下書きを作ってくれる」程度の機能なら、もうどの道具にも付いています。2026年9月、HubSpotが発表した秋の大型アップデート(Fall 2026 Spotlight)が違うのは、そこから一歩進んで、キャンペーンの計画から制作までをAIが引き受ける形に寄せてきた点です。

一次情報はこちらです。

この記事の結論を先に書きます。 道具が「実行する側」に回ったことで、発注側・利用側が用意すべきものが変わりました。 用意すべきものは新しい予算ではなく、AIに渡せる状態に整った自社のデータと、どこで人が止めるかの線です。 そして、乗り換えの判断を今日決める必要はありません。

先に、言葉を揃えます

言葉この記事での意味
MAツールマーケティングオートメーション。見込み客の情報を貯めて、メール配信やページ作成、追客をまとめて回すための道具。HubSpotはその代表格のひとつ
CRM顧客管理。誰がいつ何を見て、誰が対応したかを1か所に貯めておく台帳のこと
AIエージェント指示を受けて、自分で手順を決めて作業を最後まで進めるAI。質問に答えるだけのチャットとは役割が違います
アシスタント人が話しかける窓口にあたるAI。今回の発表では、ここが受け付けて、実作業をするエージェントに振り分ける形になっています
パブリックベータ試験提供。誰でも使える状態で公開されてはいるものの、仕様が変わる前提の段階。正式提供とは区別して読む必要があります
ランディングページ広告やメールから来た人が最初に着く、申し込み用のページ

発表で確認できたこと

公式ページから確認できた範囲だけを書きます。

入口が変わりました。 マーケティング向けの画面(Marketing Studio)が作り直され、開くとまず現状の指摘が出る形になっています。公式の説明では、AI検索で自社がどう見えているかのスコア、成績の悪いキャンペーンの区分、追いかけ直すべき見込み客といったものが並びます。作業画面ではなく、「直す候補の一覧」が入口に来たということです。この画面は試験提供の段階だとされています。

その場で実行まで頼める形になりました。 表示された指摘に対して、アシスタントに「これを何とかしたい」と伝えると、担当のエージェントが割り当てられて作業が進む、という流れが示されています。公式が名前を挙げているもののうち、マーケティングに直接効くのは次の2つです。

名前公式が説明している役割段階
Campaign Agent目標や指摘を受け取って、使う経路・伝える内容・必要な制作物を一本につないだキャンペーンの計画にする試験提供
Content Agent書く前に調べる。自社の言葉づかい、読み手の情報、競合の状況を踏まえてブログ記事・SNS投稿・ランディングページを作る試験提供

土台に置かれているのは自社のデータです。 HubSpotはこれを「Growth Context」と呼んでいます。呼び方は各社それぞれですが、言っていることは単純で、AIの出力の良し悪しは、その会社のデータをどれだけ渡せているかで決まる、という主張です。公式ページにも、その土台がなければ「ただのチャットボット」だという趣旨の記述があります。ここは道具の宣伝としてではなく、事実として受け取ってよいところだと私たちは考えています。

確認できていないこと

ここは正直に書きます。

  • 日本語での使い勝手。発表は英語圏向けで、日本語の文章生成がどの水準かは公式からは読み取れません
  • 日本での提供時期と条件。試験提供の対象範囲が日本の契約にどう及ぶかは、公式発表の文面からは確定できません
  • 改善幅の数字。公式ページには、先行して使った利用者でキャンペーンの作成数や見込み客の数が伸びたという数値が載っています。ただしこれはHubSpot自身が出した値で、第三者が検証したものではありません。しかも「先行して使った利用者の平均」です。自社で同じ数字が出る根拠にはなりません。数字そのものはリンク先で確認してください

で、自社のマーケティングにどう効くのか

発表の要約はほかにもいくらでも出ます。ここから先が、この記事で書きたかったところです。

1. 変わったのは賢さではなく、担当範囲

今回の発表で増えたのは「AIの頭の良さ」ではありません。AIが手をつける範囲です。これまで人が「案を出させて、選んで、組み立てて、作る」の2番目以降をやっていたところに、機械が入ってきました。

この違いは、導入時に検討すべきことを変えます。案を出すだけの道具なら、出来が悪ければ捨てれば済みました。実行まで進む道具は、悪い判断もそのまま実行されます。だから比較すべき項目は「出力の質」よりも「止められる場所があるか」に移ります。私たちが自社の運用で承認の置き場所をどう決めたかは、マーケティングを4工程に分け、AIエージェントを配置するに書きました。

2. 効き目を決めるのは、道具ではなく渡せるデータ

同じ機能を入れても、会社によって結果がまるで違う理由はここです。自社の顧客台帳に、誰が何を見て、どの案件がどうなったかが揃って入っている会社と、名刺情報だけが眠っている会社では、同じエージェントに渡しても出てくるものが変わります。

つまり、契約を変える前にやるべきことがあります。手元の台帳を開いて、AIに読ませたときに意味が通るかを見ることです。ここが整っていないまま高機能な側に乗り換えると、払う金額だけが増えます。

3. 「ベータ」を社内の説明でぼかさない

試験提供の機能は、仕様が変わります。途中で名前が変わることも、無くなることもあります。社内で導入を通すときに、ここをぼかして「もう使えます」と説明すると、あとで説明責任が自分に返ってきます。

私たちが自社の運用で踏んだつまずきも、多くはこの種類でした。詳しくはAIエージェント運用でつまずいた7つの場所に書いています。

4. ベンダーが出す数字の読み方を決めておく

道具の発表には、ほぼ必ず改善幅の数字が付きます。読むときの線は単純で、**「誰が測ったか」と「誰の平均か」**の2つです。自社が出した値なのか、第三者が検証した値なのか。先行利用者の平均なのか、全体なのか。この2つを確認するだけで、比較検討の会議で消える時間がかなり減ります。

同じ論点は、AIの使用量と成果をつなぐ画面についても書きました(OpenAIが「AIの使用量」と「成果」をつなぐ画面を出しました)。道具が出してくれる線と、自社で引くしかない線は違います。

5. 乗り換えの判断は、急がなくていい

今回の発表は、ある特定の会社が一足飛びに先へ行った、という話ではありません。主要なMA・CRMの各社が、同じ方向へ同時に動いています。つまり急いで乗り換えても、半年後にはどこも似た機能を持っています

急ぐ価値があるのは機能の獲得ではなく、そこに渡すデータと運用の準備のほうです。こちらは、どのツールを選んでも無駄になりません。外に出す範囲をどう切るかはAIマーケティング代行は、何を代行して何を代行しないのかに整理しています。

まとめ

  • 2026年9月、HubSpotが秋の大型アップデートを発表した。AIが案を出すだけでなく、キャンペーンの計画と制作まで引き受ける形になった
  • マーケティング向けの画面が「直す候補の一覧」から始まる形に変わり、そこから実行まで頼める流れが示された。主要な機能は試験提供の段階
  • 日本語での使い勝手、日本での提供条件は、公式発表からは確定できない
  • 公式が出している改善幅の数字は、自社発表であり第三者検証ではない。先行利用者の平均でもある
  • 道具が実行する側に回ったぶん、比較すべきは出力の質より「人が止められる場所があるか」に移った
  • 結果を分けるのは機能ではなく、渡せる状態に整った自社のデータ。ここは乗り換え前に手をつけられる
  • 各社が同じ方向へ動いているので、乗り換えの判断自体は急がなくてよい

関連して、発注先を選ぶ側の判断軸はAIエージェント導入を頼める会社の見分け方に、任せる範囲の線引きはAIマーケティング代行は、何を代行して何を代行しないのかにまとめています。

AIエージェントを自社のマーケティングに入れるとき、どこから手をつけ、どこで人が止めるのか。私たちが自社で運用してきた内容をまとめた無料レポート『AIエージェント導入の実際』を/report/で配布しています。自己診断シートを付けているので、今の自社がどの段階にいるかを確認したうえで、次に何を整えるかを決めていただけます。


本記事の内容は2026年9月時点のものです。

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