Claudeが書いた文章には「透かし」が入っている — AIで書いたことは、いずれ分かる前提で考える
Anthropicが、Claudeの出力に目に見えない透かしを入れていることと、その判定窓口を公開しました。何が判定でき、何は判定できないのか。AIで原稿を作っている会社が、いま決めておくべきことを整理します。
Anthropic が、Claude の書いた文章に「透かし」が入っていること、そしてそれを判定するための窓口を一部の組織に開いていることを公表しました。
一次情報はこちらです。
- Anthropic「How Claude’s text watermarking works」 https://www.anthropic.com/news/claude-text-watermark
この話は、新しいモデルが出たという発表よりも、日々の仕事に静かに効いてきます。AIに原稿を書かせている会社は、今日から前提をひとつ入れ替えておいたほうがいい、という種類の発表です。
何が発表されたのか
確認できた範囲を、そのまま並べます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 2026年8月2日より後に出た Claude のモデルの出力 |
| 透かしとは | 文章の中に埋め込まれた、目に見えない統計的な目印。「Claude が書いたことに関わっている確からしさ」を数値で示すもの |
| 見え方 | 判定の窓口を持っていない人には、まったく見えない。文章の質や内容にも実質的な影響はない |
| 判定できる人 | 限定公開。EUの法律上その必要がある組織(規制当局、法執行機関、報道、ファクトチェック、独立研究者、教育機関、EUの市民社会団体)と、同様に検証義務を負う企業 |
| それ以前のモデル | 経過措置の対象で、これから順次、透かしが入っていく |
| 背景 | EUのAI法(AI Act)。Anthropic は2026年7月に、AI生成物の透明性に関するEUの行動規範に署名している |
ここで言う「窓口」は、プログラムから呼び出して判定させる仕組みのことです。誰でも試せる無料のチェッカーではありません。申し込んで、対象に当てはまると認められた組織だけが使えます。
透かしが「言っていないこと」のほうが重要です
誤解が起きやすいところなので、公式が明示している線引きを先に置きます。
- 透かしには、使った人・所属する組織・やりとりの中身の情報は入っていない
- 透かしは、その文章の著作権や書いた人が誰かについては何も言わない
- 利用規約の上での権利関係も変わらない
- 判定が返すのは「Claude が関わった確からしさ」であって、白黒の断定ではない
つまりこれは「盗作の検出器」でも「社員の監視装置」でもありません。「この文章の生成にAIが関与した可能性が高い」と言えるだけの仕組みです。
それでも実務上の意味は小さくありません。これまで「AIで書いたかどうかは、読んでも分からない」という暗黙の前提の上に成り立っていた運用が、いくつもあるからです。
日本の会社のマーケティングに、どう効くのか
私たちは自社のコンテンツをAIエージェントに書かせています。その立場から、判断が変わると思う点を挙げます。
「分からないから大丈夫」で組んだ運用は、組み直す
AIで大量に記事を作り、人の名前を付けて出す。外注先から納品された原稿を、そのまま自社の署名で公開する。こうした運用の多くは、「見分けがつかない」ことに依存しています。
依存先が消えたわけではありませんが、確実ではなくなりました。しかも判定の対象は、これから増える方向にあります。EUの行動規範には多くの提供元が署名しているので、Claude だけの話で終わらない可能性が高い。
ここで取るべき対応は、AIを使うのをやめることではありません。「見分けがつくと分かっても困らない作り方」に寄せることです。AIに下書きを作らせ、事実確認と判断は人が入れる。誰の責任で出したかを社内で説明できるようにする。それだけで、この発表はほとんど怖くなくなります。
受け取る原稿の扱いを、契約と発注書に書く
自社が使う側であると同時に、多くの会社は「受け取る側」でもあります。制作会社やライターに発注した原稿が、どこまでAIで作られているか。いま契約書に書いていない会社がほとんどのはずです。
判定できる組織が増えていく前提なら、揉める前に決めておくほうが安いです。禁止か、許容か、許容するなら何を人が担保するのか。禁止と書くつもりがないなら、無理に書かないほうがいい。守れないルールは、そこだけ形骸化して他のルールまで軽くします。
開示のルールは、規制が来る前に自分で決める
今回の透かしは、EUの法律に対応するためのものです。日本国内で同じ表示義務が課されるかどうかは、この発表からは何も言えません。
ただ、自社で先に決めておくことはできます。AIが下書きしたと書くのか、書かないのか。どの媒体では書くのか。読者に対して不誠実にならない線を、自分たちの言葉で引いておく。あとから規制に合わせるより、はるかに楽です。
まだ分からないこと
正直に書きます。今回の発表から読み取れないこともあります。
- 人が大きく手を入れて書き直した文章が、どこまで判定に残るのか
- 判定の窓口が、今後どこまで広く開かれるのか
- 日本国内の制度が、この方向に追随するのかどうか
いずれも公式に確認できていないので、断定しません。ここを推測で埋めた解説記事は、いずれ間違いになります。
まとめ
- 2026年8月2日より後に出た Claude のモデルの出力には、目に見えない透かしが入っている
- 判定できるのは、EUの法律上その必要がある組織と、同様の義務を負う企業に限られる(限定公開)
- 透かしは、使った人や組織の情報を含まない。著作権や書いた人が誰かについても何も言わない
- 効いてくるのは「AIで書いたと分からない」ことに依存した運用。そこは組み直す
- 外注原稿の扱いと、自社の開示ルールは、揉める前に文字にしておく
- 手を入れた文章がどこまで判定に残るかは、公式には確認できていない
同じ Anthropic の直近の発表については Claude Fable 5.1 が出た にまとめています。AIに原稿を書かせる運用を実際にどう組んでいるかは メルマガの下書きができるまで と AIエージェント運用でつまずいた場所 に、自社の実装をそのまま書きました。
AIに任せる範囲をどこで区切るか、承認をどこに置くかを社内で詰めている段階なら、無料レポート『AIエージェント導入の実際』が使えます。自己診断シートを付けて /report/ で配布しています。今回のような話が出たときに、自社のどこを見直せばいいかを判断する材料になるはずです。
本記事の内容は2026年9月時点のものです。
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